日本ナレッジ・マネジメント学会アート部会
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第14回KMSJアート部会報告書
【日時】平成22年10月23日(土)17時〜19時
【場所】小石川後楽園涵徳亭別間(JR飯田橋5分)
【出席者】4名(小野瀬、眼龍、谷澤、堀田)
【研究テーマ】「弓道の知から学ぶKM戦略」
【配布資料】
「弓道の知から学ぶKM戦略」(小野瀬)
【発表者】
小野瀬由一(アート部会長)

【発表概要】
■弓道の知から学ぶKM戦略
1.弓道の歴史と知からの学び

1)弓道の歴史
・縄文時代、弓は狩猟の道具。
・弥生時代、弓は戦いの武器に使用。
・奈良時代、遣唐使・遣隋使が支邯那弓道を吸収して帰国。弓は皇室神道の神事に敬神の矢として使用。
・平安時代、武家の射から公家の射(礼射・賭弓)へ展開。
弓術として、文射・礼射(儀礼としての弓射)+武射(武器としての弓射)に発展
=古代弓道。
・鎌倉時代、射術の修練として、固定的「流鏑馬(やぶさめ)」「笠懸(かさがけ)」、移動的「犬追物 (いぬおうもの)」=騎射三物(弓馬の射)へ発展
=貫徹の射の時代。
・室町時代、公家+庶民の賭け事として揚矢が流行。
近代弓道二大流派の小笠原家が後醍醐天皇の弓馬の 師範となり、また日置弾正正次が二大流派日置流の基を築く。
・安土・桃山時代、長篠の戦(1574)など戦に鉄砲が本格導入され、弓の武器としての価値消滅。
・江戸時代、天下平定のもと、「三十三間堂の通し矢」(堂射)や射法・射術が発展した。
しかし、江戸幕府の洋式戦闘術採用により弓術は消滅。
・明治時代、小笠原清務(小笠原流28代)が最初の学校弓道(1889)を開設し、本田利実師範(本田流)が東京第一高等学校に弓道部設置(1892)。 京都亀岡藩及川広愛師範が「大日本武徳会」結成(1895)。
・大正時代中期、中学校課外授業で弓道盛ん。
・昭和時代、中学正科授業で弓道が柔道・剣道と共に採用(1936)。
太平洋戦争敗戦(1945)により武道教育は中止となったが、学校弓道は1946年に復活。
大日本武徳会解散(1946)後、全日本弓道連盟結成(1947)されたが、翌1948年には解散し、日本弓道連盟結成(1949)され、後に「全日本弓 道連盟」と改称された。

2)弓道の知
・弓術「五射・六科」によれば、五射とは巻藁前・的前・遠矢前・差矢前・要前、六科とは
(1)弓理(射術理論)
(2)射礼(礼法・作法)
(3)弓法(弓矢の取扱い法)
(4)弓器(弓具の知識
(5)弓工(弓具制作の方法)
(6)丹心(心の訓練)
である。 ・正方流「日本弓道正覚図」によれば、
(1)弓→発心→修練→射格→果、
(2)修身→弓道(直心大和+民族 自覚)→有識者育成(伝統護持+心身鍛錬+哲理具現)→正法→正射正中(聖射)→悟道→絶対界→活人弓
(3)享楽→弓戯(唯物自我+的中至上)→機械的練習(筋肉酷使+技巧追及+競射反復)→邪道→弄技的中(凡射)→巧拙→差別界→殺人弓となる。
・日置流竹林派田寺豊著『弓道と人間の本質〜生命の発生・存在・存続』によれば、正統弓道とは、 弓一射の内に、過去身→現在身→未来身の三世を引き交わし、理想の射道を求め併せ、この三世を正道において統一を成す理を求めるのであり、永遠に続く人間 の正しい生き方を求めること(日置流)。過去身とは、地球上に最初の生命が誕生する以前。現在身とは、地球上に最初の生命が誕生してから以後の現在までの 生命の存在。未来身とは、現在より未来への理想の人間社会をいう。
・日本弓道連盟(全日本弓道連盟)「射法八節」によれば、射法は
(1)足踏み(礼射系=一足開き、武射系 =二足開き)→
(2)胴づくり→
(3)弓構え(礼射系=正面の構え、武射系=斜面か正面の構え)→
(4)打起し →
(5)引き分け→
(6)会(大三・頬付け・口割り)→
(7)離れ(大・中・小)→
(8)残心である。
・弓道の矢は「麦つぶなり」で真中が少し膨らむ流線型をしている。

2.弓道の知とKM戦略に関する考察
(1)弓道の知に関する考察
1)弓道の場(エリア)
・弓道の場は、
(1)狩猟→
(2)戦場+神事→
(3)武家+公家(=弓術)→
(4)古式弓道→
(5)学校弓道→
(6)連盟弓道
を経た。
2)弓道の型(モデル)
・弓道の型は、
(1)狩猟武器→
(2)戦場武器→
(3)弓術→
(4)古式弓道(五射・六科)→
(5)連盟弓道(射法 八節)
がある。

3)弓道の革新
・弓術として、武器(武射)の弓に儀礼の弓(文射・礼射)を融合させた。
・古式弓道として、「五射・六科」を体系化した。
・連盟弓道として、「射法八節」を体系化した。

4)弓道の伝承
・神事への採用→弓術の体系化→学校弓道の開設→連盟弓道による段位制度へ展開。

(2)弓道の知から学ぶKM戦略に関する考察
1)弓道のKM
・弓道は、対戦式武道ではなく、的を射る自分との闘いであり、自己の精神鍛錬の手法として有効 である。
・弓術「五射・六科」によれば、五射は場面設定、六科は各場面において最高のパフォーマンス を得るための6つの課題と読める。すなわち、ビジネス場面で対比すると、
弓理(射術理論)は ビジネス理論習得、
射礼(礼法・作法)はマナー習得、
弓法(弓矢の取扱い法)はビジネス手法、
弓器(弓具の知識)はビジネスツール、
弓工(弓具制作の方法)は文書制作やコミュニケーション 術と解釈されるが、
丹心(心の訓練)は現代ビジネスでは欠けていると考えられる。

2)弓道の形式化
・弓道は、江戸時代に古式弓道「五射・六科」の体系化、昭和時代に弓道「射法八節」を体系化した。
・アーチェリーは西洋において競技化されたスポーツで、弓を左に番え、右手人差し指、中指、薬指 で弦を引く「地中海式」であるのに対し、弓道は弓を右に番え、右手親指根で弦を引く「蒙古式 (モンゴル式)」である。

3)弓道の伝承
・弓道は他の武道と同様に道場により射法を伝承し、流派による家元制は採らず、弓道場で各流派の 秘伝訓練をマスターすると免許皆伝となり、免許皆伝者は自己の道場を開設できる方式をとっている。
・これに対し、茶道などの芸道は家元制により型を伝承し、表千家、裏千家、武者小路千家など正統な家元の訓練を修了した師匠のみが教室運営を許されてい る。
・これに対し、現代ビジネスではノウハウ・技術伝承は、OJTとoff-JTに区分され、OJTではマニュアル+現場研修、off-JTではテーマ別の通 信講座・研修会・オンライン研修等への参加などが主である。

4)弓道の知から学ぶKM戦略
・現代ビジネスの環境は激変しているため、ビジネス手法のライフサイクルは短縮化している。これらビジネス環境の変化に対応するKM戦略を構築するのため には、ビジネス理論・ビジネスマナー・ビジネス手法・ビジネスツールの基礎知識をマスターし、かつコミュニケーションや心の訓練を行える変化対応型の仕組 みづくりが重要と思われる。

【次回研究会】
・日時:平成22年12月18日(土)17時〜19時
・場所:小石川後楽園涵徳亭日本間
・テーマ:柔道の知から学ぶKM戦略

(文責:小野瀬由一)



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