日本ナレッジ・マネジメント学会アート部会
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第2回KMSJアート部会議事録
日時:平成20年7月22日(火)18:00〜19:30
場所:KMSJ日本橋事務室会議室
出席:顧問理事 森田 松太郎(KMSJ理事長・ARI研究所理事長)
    顧問  神内 俊郎(株式会社国際DIS研究所代表取締役・工学博士)
   部会長  小野瀬 由一(ICG国際コンサルタント・経営学博士)
   副部会長 星 憲一朗(音楽レーベル涼音堂代表・音楽プロデューサー)
   部会員  田中 孝司(KMSJ専務理事)
        平松 豪(株式会社東潤株式会社)(以上6名)
発表要約:
1.アートとメディアの関係性考察(小野瀬由一)
 アートの発展の歴史は、洋の東西を問わず、政治、宗教、パトロネージュ、情報技術・ メディアの進化に大いなる影響を受けてきた。
西洋の空間アートは、劇場空間でのギリシャ悲劇“語りの芸術”がBC500頃に始まった。
一方で、プラトン、アリストテレスなど西洋哲人は“記述の知”をBC450頃に開花させた。 同時代、東洋では孔子など諸子百家による“記述の知”が蓄積された。 そして、マケドニア(ギリシャ北部)のアレクサンドロス大王は世界初の収集目録「ピナケス」 (“知のDB”)をBC350頃に大成した。
しかし、ローマ帝国の宗教による芸術・知の収集と国家支配がBC300頃に始まる。 その後、ローマ帝国による英雄伝と年代記“文字による国史伝承”がAD100頃行われる。 この頃、東洋(中国)で紙がAD105に発明された。
その後、西洋ではビザンチン(東ローマ帝国)建設のため民族大移動“芸術交流”が起こり、 AD1400頃まで続く。
同時代、東洋(中国)では7世紀に木版印刷機が発明された。
この頃、日本では天武天皇らにより仏教が国教として採用され、仏教音楽「声明」が普及した。 AD700頃、日本では雅楽が宮廷音楽として採用・保存された。
AD900以降、西洋では荘園が強大化し芸術のパトロネージュとなる。
AD1200頃(平安時代末期)、日本では天皇勢力が弱体化し、武家による音楽芸術が発展した。 この頃、日本でも“知のDB”金沢文庫が創設。
AD1300以降(室町時代)、日本は中国、朝鮮との交易を始める。
AD1400頃、イタリア荘園によるフィレンチェルネサンスが始まり1600年代まで続く この頃、ドイツ・グーテンベルグが印刷機を1454年に発明し、欧州では、文学・絵による出版が 始まる。→文字・絵の出版によるマスメディア化 AD1500頃、西洋による大航海時代始まる。
しかし、日本は1639年から1864年(安土桃山時代から江戸時代)まで鎖国政策をとり、鎖国に より日本独自の文人画、写生画、浮世絵、能楽、民謡等のアートが発展した。
AD1765、英国のワットが蒸気機関車を発明し産業革命が始まる。
AD1800、イタリアのボルタが電池を発明し電気時代の幕開け。
AD1869、米国のエジソンが蓄音機を発明し、米国では1890年にレコード販売が開始された。
→音楽のレコードによるマスメディア化 AD1903、米国のライト兄弟が飛行機を発明。→飛行機による国際間高速移動時代到来
AD1920、米国でラジオ放送が始まる。→音声・音楽の電波によるマスメディア化
AD1925、米国でトーキー映画が始まる。→物語・音楽の映像によるメスメディア化
AD1935、ドイツで磁気テープ録音機登場。→音声・音楽の録音テープによるメスメディア化
AD1939、米国でTV放送が始まる。→TVによるアート映像の大消費時代到来
AD1946、米国で世界最初のコンピュータANIACを発明。→コンピュータによるデジタル時代到来
AD1956、米国でビデオレコーダ発明。→音声・音楽・映像のビデオテープによるマスメディア化
AD1970、全世界でVTR普及。→VTRによるアート映像の大消費時代到来
AD1974、米国で世界発コンピュータ発売。→PCによるデジタルアートへの展開
AD1985、米国で世界初PC発売。→CGによるデジタルアートの展開
AD1991、米国でインターネット商用化。→インターネットによるアートコンテンツの大量消費時代到来
AD2003、全世界でインターネット有料音楽配信開始。→インターネットによるアートコンテンツ流通への展開

以上のように、近年の目覚しい情報技術とメディアの発展により、アート表現の多様化、アート相互・国際間 など芸術間融合が進展する中で、今日のアートは、自国と他国の文化・芸術の理解に立脚し、個性豊かな発想力 やオリジナリティ溢れる表現力によって、弛まぬ“創造と再生”を育むことが期待されているといえよう。
(文責:小野瀬由一)

2.音楽芸術の“場と型”と伝統芸術の奥儀について(星憲一朗)

・「道」とはどのように発生したか:歌の道/兵の道......職能/身分の固定/技芸
・「道」の思想の原型は歌道の「花伝書」に見ることが出来る.....「古今伝授」
・古今伝授は口伝+切紙の形からなり、「三木三鳥大事(をかたまの木・めどのけづり花・かはな草) (稲おほせ鳥・百千鳥・呼子鳥)秘秘(ほのぼのと)」から構成される ・伝授/伝承の方法にみられる特異性は人類学的に日本の家族構造から説明することが出来る
2.「連歌」の発生と展開で日本の芸道論は大きく方向性が定まることになった
・連歌の「場」である会所、寝殿(ハレ)書院(ケ)が茶室に展開する
・連歌の「場」である座敷が身分/上下関係の無化へと方向付ける...禅や念仏の影響
・生と死の可逆性、自然の反転の力、などが中世の芸道思想に込められる
・日常、自然を「型」によって抽象化して表現する
・伝書は江戸初期に展開する;出版文化の発達、成熟で秘伝性が薄れる:口伝→メディアの型の固定化
・このような日本の芸道論の中核をなす「場」と「型」は同様な現象を音楽の発表される場や、新しい音楽の生み出される「場」が「型」と相関する現象を見る ことが出来る。 ・「場」と「型」の相関:クラブミュージックとナイトクラブ:ナイトクラブという「場」から音楽の「型」が音楽の用途(ダンスミュージック)によって固定 化していく ・ポップスは時代の枠組みからもまず「型」が固定され、そこを外れたスタイルを持つ音楽はポップチャートに適用されることはない:(ラジオのエアプレイの 型から発生)





3.“型と場”の考察(神中俊郎)

・武道は、型を学び、型を超える。
・“型”には、変わるものと変わってはいけないものがある。
・エネルギーとエントロピーには、“集中と拡散”、“秩序と混乱”、“記憶と忘却”などの相対原理がある。
・エントロピーには、情報のエントロピー→統計エントロピー→熱エントロピーへの転換、社会エントロピー →負のエントロピー→残留エントロピーへの展開が考えられる。
・『創造と再生』はイタリアの600年続く会社の理念である。能舞台にある古松+若松は専門家が集う創造と 再生を意味するのではないか。
・佐藤一斎著「言志晩録」によると、少に学べば則ち壮にして為すあり、壮に学べば則ち老いて衰えず、 老に学べば則ち死して朽ちずとある。
・21世紀が直面する難問は、環境、医療、食糧、教育、グローバル経済と考えており、今後も取り組んで いきたい。



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